未送信メール

 

 

  

 ただの部員同士の関係なのに個人的なメールを送るのはいかがなものか、いや別に年末の挨拶くらい普通にするだろ。画面を睨みつけながらそんなことをうだうだ考えていれば仰天した。年が明ける、それもあと数分で。

 もういいや今更送った所で。誰とはなしに言い訳をして削除しようとした途端、表示されたのは「送信しました」の文字。

 うわっ、やっちまった。あっという間に心臓が早鐘を打ち始め、携帯を握る手が汗ばんでいく。たいしたことは書いていない。けれど、これを見たあいつはどう思うのか。なんでいきなり、と戸惑うのか。それとも。


 程なくして、手中にあるものが細かく振動を始める。おそるおそるメールを開けば、相手はやはり先ほどの送り主だった。

「こちらこそ! 来年もよろしくね」

 ――我ながら女々しいよな。

 分かっていたこととはいえ、あまりに普段と変わらない様子にわずかな落胆と大きな安堵に包まれる。自嘲を込めて息をついた瞬間、煩悩を打ち消さんとする鐘が遠くから鳴り響き始めた。