「ねえ、こんなところで寝たら風邪引くよ。ベッド行こうよ」

「んー……」

「ねえってば」

「ん……」

「もう……」

 しょうがないなあ、と一向に起きる気配のない彼に一つため息を吐き、私よりも広い背中にブランケットを掛けた。

 職業柄、普段は彼の方から私の髪に触れることが多いけれど、逆はそれほど多くはない。栗色の髪の毛に指を通して頭を撫でると、心なしか顔が綻んだようで釣られて微笑んだ。

「……いつも遅くまでアレンジの勉強してるもんね。お疲れ様」

 幼かったあの頃と全てが同じ訳ではない。歳も、置かれている立場も、私達の関係も、追い求めているものも。

 けれど、夢を実現させんと前を見据える眼差しはあの頃のままで。そして、それを後方から見つめる私もあの頃のまま。

 私にできることはただ祈ることだけだ。あまり無理はしないで。でも、諦めないで。他の誰よりも、私は貴方なら夢を叶えられると信じてる。

『ファイト、清水くん!』

「……頑張って、大河くん」

 

 

 

うたた寝してる相手に毛布を掛ける