エール
「いってきます!」
溌剌とした声色に僅かな緊張を滲ませながら玄関のドアを開け、からりと澄みきった空の下へ娘は飛び出していった。
時が経つのは早いもので、部活を引退してから約半年。毎日脱衣所に出されていた練習着やタオルも、今は息子のものだけだ。土日も部活や試合があるからと、あの子のためにスタミナ弁当も用意する必要もない。机の上に置かれていたソフトボールに関する書籍は本棚に仕舞われ、代わりに教科書や参考書が広げられるようになった。そうして、あっという間にこの日がやってきた。
野球、そしてソフトボールと、これまで続けてきたあの子の時間。
振り返ってみると、あの子に対して「勉強しなさい」「偏差値大丈夫なの?」などと口にすることはこれまで特になかったように思う
あの子から不安の言葉などを耳にしたことはあまりなかったけれど、当然
必要以上に突っ込んだことを尋ねたことはなかったとはいえ、全くの無関心というわけでは決してない。そしてそれは、何も私だけではなかった。
「そういや姉貴、今日だっけ」
「ああ」
リビングへ戻ると、テレビを見つつパンを齧る息子と新聞を広げな
記入ズレとか、バカみたいなポカしないといいけど。ここまできた
いつものように少し皮肉ったような、突き放したような物言い。け
決定的な言葉を、面と向かっては勿論、当事者のいないこの場で
あなたがこれまでひたむきに培ってきた努力が、想いが報われます
だから、いってらっしゃい。薫。